↓前回の記事。
前回、購入時の点検としてとりあえずエンジンを掛けてみたスーパーカブc50。半世紀以上前の個体であるが状態は比較的良く、少しの修理で公道に戻れそうだと分かった。
今回から本格的にレストア作業を進めていく。
レストアの方針としてはとりあえず車体を全て解体し、各部品の状態の確認をする。ゴムなどの劣化しやすい消耗品や経年劣化で使えなくなっている部品は新品に交換したい。また、車体表面の錆は全て削り落として防錆処理をする。塗装については純正の色を残すべきかかなり迷ったが、汚いとゴミと思われて盗まれたりしたら嫌なのでこの際綺麗に塗り直すことにした。
ということで各部の解体を行っていく。
まずはハンドル。配線やブレーキケーブル、メーターケーブル、アクセルワイヤーを外してハンドル下の二つのナットを外すとハンドルが外れる。
最近のカブと異なる点はこのアクセルワイヤーの機構。ワイヤーがハンドルの中を通っている。グリップの中にらせん状の溝が切ってあり、グリップを回すことでその溝をそって金具が動き、ワイヤーを引っ張るという仕組みである。
正直この機構は好きじゃない。錆や汚れで金具の動きが渋くなりやすい上に、パーツがおそらくもう出ないからである。
ハンドルが外れた図。
さらに分解を進めていく。
ここで最初の難関が...外れないことで有名(?)なステムナット。
これが本当になかなか外れない。「ステムナットレンチ」という特殊工具があれば比較的簡単に外せるらしい。
↓ステムナットレンチ
今回はフックレンチでなんとか頑張った。
元から強く締まっている上に50年の時間と錆によって普通にやったのではビクともしない。こういう時はガスバーナーで炙るに限る。
↓これがあると固着したネジを外すときに非常に便利。小型で火力も丁度よく、扱いやすい。
冷めないうちにマイナスドライバーをナットの溝に当て、クソデカハンマーで叩く。
フックレンチを引っかけて叩くのもよい。
外れた。
どんどん分解していく。
なんか結構複雑に色々ついている。
最後にこのナットを外せばフロントフォークが取り外せるようになる。
この年式のカブはフロントフォークのベアリングが玉なので何も考えないでいるとボロボロと玉が転がって行ってしまい非常に面倒である。ちなみに私はそれをやってしまい、今1球足りない...
続いてタンク。古いカブの特徴的であるフレームと別体式のタンクは4本のボルトで留まっている。
取れた。
行灯の愛称で知られるポジションランプ。なんと未だに社外製の補修パーツが売っている。普通のカブに取り付けて行灯カブ風にするというカスタムが存在し、どうやらそのために需要があるらしい。
これは...抵抗器?
おそらくだが、この年式はセレン整流器で交流→直流に変換し、バッテリーで電圧を制御している(レギュレーターがない)ため灯火類を切った状態で走行すると過充電状態になってしまう。それを防ぐために灯火類を切っているときはこの抵抗が電気を消費しているのではないだろうか。
チェーンカバー。
リアサスペンション。旧カブは現行車よりかなり長さが短い(スイングアーム側が高いため)ので購入するときは注意が必要。
フロントスプロケットとチェーン。チェーンは420サイズ、スプロケは純正で13丁。
リアスプロケット周り。スプロケの形状も少し今のと違うような気がする。全体的に細いというか...
エンジンも降ろす。
クランクケースカバーがネジで固定されているのでいつもなら舐めてしまうところだが、その対策のためにショックドライバーを買った。
どんなネジでも大体外れる。買ってよかった。
全体的に油にまみれた砂埃がすごい。
ウインカーリレー
途中経過。
スイングアームも外す。裏が結構錆びていた...
ブレーキペダル、センタースタンドも外す。カラーの割ピンを外して
反対側から棒を突っ込んで叩くと外せる。
電装系も外していく。イグニッションコイルはタンクの下に配置されている。
ポイント点火用なので部品の調達に苦労しそう...まだ元気そうなのでいいが。
キーランプとメインキー。ランプはカバーが風化してボロボロになっている。
社外の補修パーツは今のところ無さそう。削ってきれいにならないものか。
リアウインカー。裏に何かの巣か卵の廃墟があった。
一か所、錆があまりに酷く、ネジがねじ切れたところがあったので溶接されているナットごとノミで叩いて落とした。
テールランプ、リアウインカーの配線はリアフェンダーの裏に出ている(80年代以降のカブは上を這っている)。
カチカチに風化したゴムで留まっているので外しにくい。
メインハーネス。
コードを束ねているビニールがガチガチになっていて少し曲げるとパキパキ割れた。充電系統がダメになっているのはこの配線のどこかが断線しているか、もしくは端子が絶縁しているのか。
最後にフロント。
ブレーキ周りは今と同じなのだろうか...
フロントフェンダー。幸いにも割れや大きな傷はない。
フロントサスペンションも分解して状態を確認したい。
旧タイプのカブは少し構造が異なり、その後の年式のカブのサスペンションは使えない。
まずここのナットを外して、
↓補修用の社外サス、若干長いらしいが使えるとのこと。
このボルトを緩めると
サスペンションが外れる。
バネは案外まだ大丈夫な感じである。左右で長さは同じ、おそらく幾らかは縮んでいるだろうが、許容範囲なのかは分からない。
ショックアブゾーバーは多分圧が抜けている。縮めたら戻ってこないのは仕様か、それとも劣化しているのか、比較対象がないので分からない。
これでほとんど全てのパーツが分解できた。最後に泥だらけのフレームを洗車。
フレーム表面の状態は塗装もある程度綺麗に残っているし、錆もそこまで広がっていない。
次回はこの錆と塗装を削って落として再塗装していく。
~つづく~